
米国越境ECにおけるデミニミス撤廃
米国越境ECでは、デミニミス撤廃を受けて、多くのマーチャント様が、関税対応や今後の物流設計について、見直しを進めているのではないでしょうか。従来の販売モデルがそのまま通用しにくくなる中で、制度の内容を正しく理解し、自社に合った対応方法を検討することがこれまで以上に重要になっています。
本記事では、そもそもデミニミスとは何か、撤廃によって何が変わったのか、そして今後どのような対応が求められるのかについて、分かりやすく整理して解説いたします。
デミニミスとは何か
デミニミスとは、米国の Section 321 に基づく低額貨物の簡易・免税制度を指します。長らく、800ドル以下の輸入貨物については、一定条件のもとで関税が免除され、簡易通関のみで輸入できる仕組みとして運用されてきました。米国税関・国境警備局(CBP)でも、低額貨物の免税扱いを “de minimis entry” として案内しており、この制度は長年にわたり、米国向け越境ECの拡大を支えてきました。
実務上、この制度があったことで、日本から米国の個人顧客に対して少額商品を1件ずつ発送する販売モデルは成立しやすいものでした。マーチャント側にとっては、少額の直送であれば、関税負担や複雑な通関対応をある程度回避しながら、米国向け販売を比較的スムーズに行えることが大きなメリットでした。
消費者・購入者にとって何が変わったのか
この変更は、マーチャントだけでなく、購入者側の体験にも大きく影響します。関税がかかるようになったことにより、単純に購入価格が上昇します。また、越境ECでは、購入者が関税の仕組みを十分理解していないことも多く、チェックアウト時には送料しか見えていなかったのに、配送途中や受取時に追加請求が来ると、強い不満につながりやすいです。UPSやDHLの案内でも、DAP/DDUでは受取人が輸入関税・税金を支払う形になり、支払案内リンクや連絡が受取人に届く運用が説明されています。
消費者目線では、具体的に、次のようなことが起きやすくなります。「サイト上の表示価格より総支払額が高くなる」「受け取り時に追加請求される」「通関待ちで配送が遅れる」「何の請求か分からず受取拒否する」といった問題です。これは単なる物流上の問題ではなく、CVR低下、クレーム増加、レビュー悪化、再購入率低下につながる顧客体験の問題でもあります。
デミニミス撤廃へどのように対応するべきか
今後の米国越境ECでは、まず「関税を誰が、いつ、どう払うのか」を明確に設計する必要があります。大きく分けると、考え方は2つです。
1. 購入者負担にする
購入者が関税・税金を負担する形です。UPSではこれをDDU、DHLではDAP/DDU文脈で案内しており、受取人に支払案内が送られる運用が一般的です。マーチャント側のキャッシュ負担は抑えやすい一方で、購入者にとっては「後から請求される」体験になりやすく、受取拒否や不満の原因になりやすいです。
2. マーチャント負担にする
マーチャント側で関税を負担する場合、購入者に追加請求が発生しないため、よりスムーズな購買体験を設計しやすくなります。ただし、マーチャント負担といっても、その回収方法には主に2つのパターンがあります。
(1)購入時の画面で関税額を明示し、別途回収する方法
この方法は、チェックアウト画面などで関税額を明示し、商品代金や送料とは別に事前回収する形です。購入者は決済時点で総額を把握できるため、配送後の追加請求は基本的に発生しません。
メリット
・購入者に対して費用の内訳を明確に示しやすい
・商品価格自体を大きく上げずに済む
デメリット
・チェックアウト時の請求額が高く見え、離脱の原因になる可能性がある
・関税計算の仕組みやシステム整備が必要になる
この方法は、価格の安さや見た目上の販売価格の競争力が重要な商材で、有効になります。関税を販売価格にすべて織り込むと、商品価格が高く見え、購入率に影響する可能性があるためです。
(2)関税などをあらかじめ販売価格に織り込む方法
こちらは、想定される関税や関連コストを商品価格や送料にあらかじめ反映し、購入者には「追加請求なし」で販売する方法です。購入者から見れば、表示された金額を支払えば完結するため、よりシンプルな購入体験になります。
メリット
・購入者にとって分かりやすく、安心感がある
・ブランドとしてスムーズな購買体験を提供しやすい
デメリット
・関税コストを見込んで価格設定する必要があり、販売価格が上がりやすいため、競合との価格比較で不利に見える可能性がある
この方法は、顧客体験やブランド価値を重視する場合に相性が良い一方、価格競争力とのバランスを慎重に考える必要があります。
関税額を抑える方法:米国3PL活用という選択肢
ここで多くのマーチャント様が気になるのが、「そもそも関税負担を抑える方法はないのか」という点だと思います。有力な選択肢の一つが、米国3PLを活用して、米国内に現地在庫を持つモデルへ切り替えることです。日本から米国へ個別配送するのではなく、まず在庫をまとめて米国へ輸入し、その後は国内配送で最終顧客まで届ける方法です。
日本からの個別発送では、販売価格に関税がかかるため、高い関税負担を負う必要があります。しかし、米国3PLを利用した現地在庫モデルでは、アメリカへの輸入の際のコマーシャルインボイス価格を原価で申告・整理できるケースがあり、関税額の減少が見込まれます。実際に、弊社のお客様の中にも、弊社倉庫の活用により輸入時の関税負担を抑えながら、販売価格の見直しや顧客体験の改善につなげられた事例がございます。
まとめ
デミニミス撤廃によって、米国越境ECは、$800以下の少額貨物でも関税がかかるようになり、従来と同じ前提のまま運用することは難しくなりました。
そのため、今後マーチャント様に求められるのは、まず自社の商材やブランド戦略に応じて、関税を誰がどのように負担・回収するのかを明確に設計することです。加えて、米国3PLを活用した現地在庫モデルも検討し、関税負担の最適化や物流設計の見直しを進めていくことが重要になります。
関税は、もはや単なる通関コストではなく、価格設計・顧客体験・利益率に直結する販売戦略の一部です。米国越境ECを継続的に成長させていくためには、制度変更を正しく捉えたうえで、販売戦略と物流設計を一体で見直しいきましょう。
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米国現地倉庫・3PLの活用をご検討中の方へ
株式会社Glowkeyは、ロサンゼルスに自社倉庫を構え、日系企業様向けに3PLフルフィルメント(入庫・保管・出荷)を提供しています。また、米国Amazon/越境ECの立ち上げ・運営など、販売・マーケティング面も含めてご支援しております。越境ECから現地在庫体制への移行をご検討中の方、アメリカ進出をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問合せください。




