「ドジャース」検索量から学ぶ、日本とアメリカにおける商品やサービスが売れるまでのプロセスの違い

前回配信した記事にもあったドジャース。私は大谷選手がドジャースに移籍してはじめて「ドジャース」という単語を耳にしました。日本人には私と同じような人が多いのではないかと思い、どれだけの検索量があがったのか気になりました。

Googleトレンドを使って調べて見ると、大谷選手が2023年12月9日(日本時間10日)ドジャースに移転して以降、日本での検索人気度が1%から72%(検索期間過去12ヵ月のうち、最も検索量が多かったときを100%とする)へと上がりました。

一方でアメリカでは開幕戦でドジャースのゲーム内容が悪い時に検索人気度が上がり、それ以降は検索人気度が一定の値を示していました。この二つの国の検索量を比較してみると、日本がいかに流行に敏感で1つの話題に対して盛り上がりを見せるかということがわかるかと思います。

このような購買の違いには文化、マーケティング戦略、市場の規模の違いがあるかことがわかりました。今回はこれら3つの違いを紐解くことで、日本とアメリカの商品やサービスが売れるまでの違いを見ていこうと思います。

 

文化の違い

 

日本は流行やトレンドが強く影響しやすい文化です。これは、集団主義の文化が強く、人々が周囲の意見や行動に敏感であるためだと思います。新しいものやトレンドが出ると、それに従う傾向が強いです。その傾向は前段のドジャースの例をみると顕著かと思います。大谷選手がドジャースに以降して以降検索数が1%から72%と一気に上昇し、逆にエンジェルスの検索量が去年の7月、パイレーツとの試合にエンジェルスが負けて以降、検索人気度が45%から4%に下がっていることからわかると思います。

(参考:https://trends.google.com/trends/explore?date=today%2012-m,today%2012-m&geo=US,JP&q=%2Fm%2F04wmvz,%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B9&hl=en,参照日2024年5月19日)

 

マーケティング戦略の違い

 

次にマーケティング戦略の違いです。

日本はトレンドに合わせたマーケティングが盛んであり、メディアや広告が新しい流行を強力に推進します。特にテレビや雑誌などのマスメディアが大きな影響力を持っています。例えば、大谷選手はエンジェルスからドジャースに移籍しました。しかし、大谷翔平選手がエンジェルスにいようと、ドジャースにいようと個人としての影響力が強いため様々な業種の企業が彼を広告塔として使いたいと考えます。そのため彼とスポンサー契約をしている日本企業はエンジェルス時代から含め、20社もあります。企業の業種は様々で、飲食系から金融までと幅広く彼を広告起用しています。日本の消費者はブランドイメージに敏感であり、ブランド価値を高めるための戦略が重要です。そのため、話題の大谷翔平選手を起用し、スポンサー契約企業のブランドの認知度、信頼性を高めています。

対してアメリカでは マーケティング戦略は多様で、個別のニーズやセグメントに焦点を当てることが多いです。SNSやインフルエンサーが重要な役割を果たしていますが、消費者の多様性が大きいため、トレンドが一貫して広がることは少ないです。例えば2024年3月にESPNで発表されたアメリカの野球ベスト選手ではAtlanta BravesというチームのRonald Acuna Jrが選ばれました。彼の出演している広告を見るとスポーツブランドやエナジードリンクというスポーツに関連した企業とスポンサー契約を結んでいます。

日本では有名な人、流行りの人を業種問わず様々な広告に起用するのに対し、アメリカでは、スポーツ関連の商品の広告にはスポーツ選手を起用するというように、専門分野ごとに出演者が異なることが特徴です。

 

市場の規模の違い

最後に市場の規模の違いです。

こちらは当たり前の話かもしれませんが、意外と盲点です。

日本では、比較的小さい市場であり、都市部を中心にトレンドが迅速に広がります。地域ごとの文化的な違いが少なく、流行が全国的に波及しやすいです。例えば、2023年のリアルタイム最高視聴率1位はWBCの日本xイタリア戦で31.2%でした。その下2位、3位もWBC関連でした。全国テレビはもちろん、スポーツバーやパブリックビューイングでWBCの番組がついてコアなファンでなくても、熱狂できる場所があります。

一方でアメリカでは広大な市場であり、地域ごとの文化や嗜好が大きく異なります。そのため、特定のトレンドが全国的に一斉に広がることは難しく、地域ごとの消費動向が異なります。ドジャースはロサンゼルスのチームなのでもちろんロサンゼルスに住んでいる人の方が関心が高く、検索人気度はピーク時で95%(検索期間過去12ヵ月)です。一方でニューヨークは同じ時期に検索の人気度が5%(検索期間過去12ヵ月)しかないという結果でした。

中でも州によって流されるチームが異なることも要因かと思われます。広大な土地を持つアメリカ大陸だからこそ、住む地域によって人種も思考も違えばもちろん応援するチームも異なります。このように市場規模が異なれば人の思考も異なり、消費行動までのプロセスも異なることが分かりました。

 

いかがでしたでしょうか。今回はドジャースという切り口をきっかけに日本とアメリカの商品やサービスが売れるプロセスの違いについて見ていきました。前述したようにアメリカでは、大衆優位ではなく個人の意見・思考が重視され、それによって消費行動が形成される傾向があります。日本のような、良くも悪くも「個々人が足並みを揃える」文化と比べ、商品やサービスを普及させるには個別のニーズやセグメントに焦点を当てて、じわじわと時間をかけてマーケティングを行う必要がありそうです。こう言った文化的背景にはもちろんアメリカが多民族国家であることを忘れてはいけません。日本では成功したマーケティング手法が、アメリカではなかなか効果が出ない、ということは私たちのクライアント様からもよく挙がる意見です。上記のように日本とアメリカにおける商品やサービスが売れるまでのプロセスを噛み砕いき適切なマーケティングを行うことが重要になりそうです。

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