これまで、マーケティング・デジタルマーケティングについて触れてきましたが、今回はデジタルマーケティングの事例に基づいて解説を行っていきます。
1. L’Oréal (ロレアル)
ロレアルはフランスに本社を置く、世界最大の化粧品会社です。
設立は1909年と非常に歴史ある会社で、イノベーションを成し遂げてきました。
その中でもデジタル重視への方向転換を行い、競合他社より早くトレンドをつかむため独自のツール開発し活用しています。
目的
将来のトレンドを見極め、そのインサイトを社内に広めること
次のトレンドを競合他社より早く察知する事
方法
ターゲットとなる消費者の投稿や記事、ハッシュタグ、ネット上の画像や動画に埋め込まれた言葉を拾いあげる。これらのデータは全て消費者が自発的に投稿しているモノであり、一般的に公開されている情報であること。
この数百万のデータを効率的に処理するためのツールが使われている。
ターゲットは化粧品トレンドに影響を与える6つの国、アメリカ、イギリス、フランス、韓国、日本、ブラジルに絞られている。
活用・効果
まだ、人々が気づいていない潜在的なトレンドを機械的にキャッチする事が可能。
商品開発のみではなく、商品ページ、SNSでの投稿、オンライン広告にも活用
実例
コロナ禍で化粧品業界のニーズは大きく変化した。人々は外出を減らし、リモートワークを行うことで実際に化粧をする機会が減ったと考えられる。
しかし、その一方でビデオチャットで自分をより魅力的にみせるために、フィルター機能を使うようになった。
ロレアルはこのトレンドをいつ早くキャッチし、2018年カナダのModifaceを買収。Modifaceでは、拡張現実技術によってオンラインショッピングの利用者がバーチャルで様々なタイプのメイクやヘアスタイルを試せる技術を持っている会社である。
消費者はこの技術により、自分の顔をスキャンして最適なスキンケア商品や、様々な色の口紅、メイクを楽しみながらオンラインで買い物が出来るようになった。
コメント
ロレアル(L’Oréal)のキャッチコピーは Because You’re Worth It「あなたにはその価値があるから」。
単なる化粧品企業ではなく、美しさや美に対する価値を提供する会社であると考えられます。
その企業コンセプトに対して、常に新しいトレンドをつかみ、時代とともに形を変えて価値を提供していく為に、デジタルマーケティングは大きな役割を果たしています。
一般の消費者が投稿するSNSや記事も一つの情報であり、それを新しい形で消費者に還元する。消費者ニーズにより近づけ為のデジタルマーケティング手法が活用されている事例であると考えられます。
2. パナソニック
国内企業の一例を見てみましょう。
パナソニックは2017年に全社横串組織の一つとしてデジタルマーケティング推進室を設置しました。
目的
従来のマーケティングは営業部に属されていたため、セールスに近いマーケティングであった。その為、事業部との連携がされておらず、統一性がなかった。全社横断のデジタルマーケティングを推し進めることで、業務の効率化と全体の最適化を図る。
ブランドキャンペーンにおけるデジタルプロモーションの促進。
方法
デジタルマーケティングを推し進めるために事業部を設置し、社内データの連携を行う。
家電や住宅を扱う企業であることから、従来の縦型マーケティングだけではなく部署間の連携を強化することで顧客に対し一貫性のあるサービスを提供。
デジタルマーケティングツール、分析ツールの導入。SNSアカウントの作成、WEBサイトの見直し。
実例
SNS施策で売上が前モデルの2倍に!「オーブントースター ビストロ」の挑戦
新しいトースターのプロモーションにSNSを活用。
消費者のインサイト調査を分析し、投稿すべきワードや製品需要を明確に行う。
また、住宅事業も手掛けるパナソニックは住宅部門のデータも活用し、撮影には自社のキッチン、その他の家電も採用することでキッチン空間を消費者に伝える。製品にフォーカスしただけの投稿ではなく、空間提案を意識して動画等も配信。
顧客からのレシピ紹介を主に行うことで、コミュニケーション設計を可能に。
コメント
デジタルマーケティングが社内でもプロモーションでも活用された事例だと考えられます。
デジタルマーケティングは以前からお伝えしているように、マーケティング活動の一つの手法である為、その手法を活用することで従来から行われてきたマーケティングの効率化を図ることも可能です。
また、デジタルマーケティングの最大の強みであるリレーションシップがSNSを通じてうまく活用された事例でもあります。
いかがでしたでしょうか?
デジタルマーケティングには様々な使い方があります。
事例とした2つの企業では、新たなシステムの導入などがされていますが大掛かりなシステムがなくてもデジタルマーケティングは可能です。
InstgramやGoogle analyticsを活用することで大まかな分析は可能です。パナソニックのSNSの一例を見て、これってデジタルマーケティングなの?と感じられた方もいるかもしれません。
昨今、SNSは私たちにとってすごく身近なもので、フォロワーを増やすために無意識のうちにデジタルマーケティングのようなことを行う若者も多くいるからです。ただし、ボールを投げ続ければいつかは当たる。ということではビジネスにはならず、時間と労力を多く費やしてしまいます。
ワードの選定、トレンド、ターゲットなど見極めたうえでプロモーションを行い、その後の効果測定を行う。そして、これらを次につなげることがビジネスとしてのデジタルマーケティングには欠かせないと言えるでしょう。