ワールドシリーズ制覇、またシルバースラッガー賞受賞、さらには3度目のMVPを文句なしの満票獲得という、フレッシュでビッグなニュースが止まらないドジャーズ大谷翔平選手。そんな大谷選手の50号記念ボールが歴代の記念球のうち過去最高額である$4,392,000*(日本円約6億5,890万円*)で落札されました。歴代最高額というだけで興味が惹かれますが、その落札はなんと台湾の企業。その背景には?なぜ実現したのか?
台湾在住の筆者が自身の考察含め深掘りしていきます。
(余談ですが、先日実は筆者、実際に記念ボールを見に行ってきました。その時の写真も合わせてお届けします。)
*Goldin X投稿
*2024/12/6のレートにて
落札の台湾企業 優式資本(UC Capital)とは
優式資本(UC Capital)とは、台北101(台湾で最も高い建造物、台北において有名な観光スポット)に会社を構える投資会社。2024年度第3四半期には同じく台北101に第2オフィスを設立予定ということからも資金力の強さは伺えます。当社は様々な取引を行い、1日の取引高最高額は数百億円に達するそうです*。
(参考:CTS 華視新聞 大谷50轟紀念球1.41億天價賣出 買主來自台灣, 参照日 2024年12月7日)
(参考:104人力銀行 優式資本股份有限公司, 参照日 2024年12月7日)
なぜ台湾の企業だったのか
皆さん、「なぜ台湾の企業なのだろう?」というのが最初の疑問として出てくるのではないでしょうか。筆者も初めはその疑問が頭をよぎりました。そこでズバリ、台湾在住の筆者が考えついた理由は以下です。
・大谷選手は日本人であるから(日本関連の話題であるから)
・大谷翔平選手の人気は誰もが認める世界的なものだから
・野球は台湾で最も人気なスポーツの一つだから
現在台湾在住の筆者は、台湾に到着して直ぐの時から現在を通し、日本との繋がりの多さを常に感じています。具体的には、日本のお店・物が非常に多いこと、また日本人として、日本の文化の人気を肌で感じること等々。台湾に関連・関心のある方、また訪れたことがある方であれば共感していただけるのではないでしょうか。
そのため、世界規模で有名・人気な日本人である大谷選手の話題性の大きさは想像できるかと思います。
また、台湾において野球は非常に人気なスポーツで、国技に値するスポーツです*。
最近終わったプレミア12、台湾の優勝でこちらは祝福ムードです。(コンビニエンスストアでは優勝を祝う買一送一-buy1get1等も多く見受けられます。)
試合時のこちらの状況はというと、実際に試合が行われていた時、レストランではお客さんが(従業員含め)ケータイを置き、食事をしながら(仕事をしながら、、)試合に見入っていました。
(参考:yahoo!新聞 台灣人最愛運動項目是?棒球奪人氣冠軍, 参照日 2024年12月7日)
また、台湾の企業であるUC Capitalがボールを手にしたという点。UC Capitalが購入したという、企業としての狙い、例えばアメリカ・日本進出を控えている、という具体的な目的というよりは、影響力・話題性を重視しての入札であったと筆者は考えます。
確かに資金力もあり、証券等の分野での影響力もあるかもしれませんが、今回は企業としてというよりかは、台湾という野球を愛する国、一般的に親日というイメージがあるような国が大谷選手の記念ボールを手にした、という大枠で捉えるのが適した出来事であるのではないかなと思います。
あくまで筆者自身の見解ですが、これらの理由から、台湾が野球に関心の強い国、また日本に関連する話題にも興味を持つ国であるという背景が大きく影響していることが、落札の背景にあると考えます。
高額落札実現の背景には何が
では、なぜこの高額落札が実現したのか、今回のオークション会社Goldinの創設者であるKen Goldinのコメントも交えて深掘りしていきます*。
まずKen氏はこの落札に関して、 “Publicity magnet” であると述べています。「宣伝」や「広報活動」を指すPublicity、つまり消費者の興味を引くマグネット= 磁石であるということです。また、単にボールを買ったのではなく、 “bought a moment” ( “その瞬間” を買った)、“capturering a piece of history” (その歴史自体を捉えた)のだとも述べています。そのモノ自体の価値より、そのモノに与えられた意味、他者がどう見なすかによって行方が大きく異なるというのは、オークションの在り方であり醍醐味ですね。
加えて、Ken氏は、現役で活躍している選手に関連するアイテムは、早ければ早いほどその価値が高くなる、またそのものに関連した出来事がフレッシュな時に、人々の記憶に新しい時にこそ一番価値が高くなるということにも触れています。今回の、大谷選手の歴史的な50/50から短いスパンでこの落札に至り、結果的に歴代最高額ボールとなったというのも納得ですね。
(参考:YouTube Ken Goldin on Shohei Ohtani’s Record Setting Home Run Ball, 参照日 2024年12月7日)
単なる高額落札に終わらない 今後考えられるプラスな影響とは?
では最後に、今後への影響に目を向けてみます。
しかしその前に、筆者が実際に台北101にボールを見に行った時の様子を少しだけお伝えしたいと思います。
筆者が訪れたのは展示開始2日目です。人は多かったものの、このボール目当てで来ている観光客はまだ少ないように感じました。と言うのも、筆者が予想するに、日本にてこの展示に関する情報が事前に大々的には流れていなかったからであると思います。
台北101内には特設のLA Dogersグッズのブースが登場し、またお土産ショップ内には、50/50にちなんだお菓子やグッズが並んでいました。
本題に戻ります。
今後考えられるポジティブな影響として、やはり大きく影響するのは台湾自体の知名度向上、またUC Capitalの企業としての知名度向上であると言えます。
話題の的である大谷選手の記念球が、アメリカでも日本でもなく台湾の企業の手に渡ったというのは、大谷選手の成し遂げた記録に加え、その意外性からも、人々の関心を大いに集めたでしょう。インターネットでさまざまな情報が即座に共有できる今、そういった人々の興味から、話題となり情報は拡散されやすいですね。
実際にこの記事を読んでいる方の中にも、「大谷選手の50/50記念ボールはどうなったのだろう?」「なぜ台湾の企業が?」といった興味を持って検索しここに辿り着いた方もいるのではないでしょうか。
加え、上記の写真内にある記念グッズ、よく見ると大谷選手やDogersといった名前は入っておらず、もはや台湾(野球)×50/50というコンセプトとなっています。それでも、この時限定の記念品ということで売れ行きは良さそうでした。これこそ、大谷選手の記念球がもたらした影響の副産物、マーケティング成功の一例ですね。
いかがでしたでしょうか。
今回は、大谷選手の50/50記念球が台湾の企業に落札されたニュースについて深掘りしてきました。台湾の企業の高額落札の背景には、台湾の日本・野球への関心、出来事のフレッシュさ、誰もが認める大谷選手の話題性がありました。
最後に、この台湾企業の高額落札は大規模の一種のマーケティングでもあると言えますね。このマーケティングがここからどのような発展を見せるのか、ぜひアンテナを張っておきたいです。
また、今後このボールがどのような道を渡り歩いていくのか、Publicity magnetとして台湾の話題性がさらに上がっていくのか、はたまた国を超えて更に多くの人の目に届くようになるのか、そちらも非常に興味深いところです。
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