各国コンビニの違いからみるローカライズの重要性【日本/台湾/アメリカ】

筆者は台湾在住の者です。

本格的な秋シーズンに入り、台湾にいてもなお、
筆者の目にはSNSを通して日本の秋限定フードの数々が飛び込んできます。
しかしこちら台湾ではというと、特に「秋の味覚」といった、いわゆるシーズンごとの訴求は、日本と比べると特に大きくは目立ちません。

国を超えても変わらず身近な存在であるコンビニエンスストア。そのマーケティングを例に取ってみても、台湾のコンビニ(便利商店)では常に何かキャンペーンは行っているものの、日本ほど季節にフォーカスしたものはあまり見受けられない印象です。
また、過去のアメリカ留学中の記憶から、アメリカにおけるコンビニエンスストアにもまた違う、その地域性に合った立ち位置があることを思い返します。

そこで今回は、各国(日/台/米)コンビニエンスストアのマーケティングをSNSを中心に比較し、地域性に沿ったマーケティングの重要性について考察します。

進出する先の市場特性に合わせたローカライズのアプローチがどう影響をもたらすのか、本稿では筆者なりの視点も含め掘り下げていきます。ぜひ一緒に比較・考察していただければと思います。

 

日/台/米 各国コンビニの機能性の違い

まずは各国コンビニの機能性をそれぞれ見ていきます。

  日本

(コンビニ密度:2,210人/1件のコンビニエンスストア) *2024年1月時点

日本におけるコンビニエンスストアは、単なる小売店舗としての機能を超えて日常生活をサポートする機能も多く含んだ場所といえます。食料品のみならず、公共料金の支払いや宅配便の受け取りを初めとし、ATMやコピー機など多くの役割を担っています。忙しいビジネスマンや学生がニーズに応じて気軽に立ち寄り用を済ますことのできる、利便性が重視された高機能な生活サポート拠点の立ち位置です。

(参考:NHK 日本の人口 1億2488万人 去年より約53万人減 外国人は過去最多, 参照日:2024年10月16日, 日本ソフト販売株式会社 【2024年版】コンビニエンスストアの店舗数ランキング, 参照日:2024年10月16日)

 

  台湾

(コンビニ密度:1,703人/1件) *2024年3月時点

台湾におけるコンビニエンスストアは、コミュニティスペースとしての機能も担った場所といえます。最近では日本の大手コンビニにて売り場拡大のためにイートインスペースが削減されるような例もありますが、台湾ではイートインスペース、カフェスペースが確保されていることが非常に多く、地域住民の交流の場としても機能しています。また台湾のコンビニエンスストアではカフェ機能が非常に充実しており、日本でもお馴染み7-11 (台湾では小七-シャオチーとよく呼ばれます)では、コーヒー、お茶、タピオカといった多くのラインナップがあります。しかも全て店員さんが作る方式で、日本と比べコンビニで飲料(カップの)を買う文化は圧倒的に浸透しています。

(参考:yahoo!新聞 灣超商2023營收4126億創新高 密集度仍輸「這國家」, 参照日:2024年10月16日, Family Mart 店舗売場面積拡大に向けイートインを売場に変更, 参照日:2024年10月16日)

 

  アメリカ

(コンビニ密度:2,204人/1件) *2024年1月時点

アメリカにおけるコンビニエンスストアは、ガソリンスタンドに付随した小さなストアというような立ち位置です。ずばり全米のうち8割近くのコンビニエンスストアがガソリンスタンドに併設されたもの、またガソリンの8割はそのようなコンビニ併設型ガソリンスタンドにて購入されている(国内ガソリンの8割はコンビニが販売しているとも言える)ほどです。アメリカにおけるコンビニエンスストアは、少しスナックを買う場所という立ち位置で、日本や台湾に比べるとストア自体の機能性は充実に欠ける部分もあるかもしれませんが、ガソリンを入れに来た際に少し立ち寄れるちょうど良いストア、という人々の簡便な購買ニーズに応えています。

(参考:NACS U.S. Convenience Store Count, 参照日:2024年10月16日)

 

各地域特有のSNSマーケティングの比較と考察

では次は実際に、各国のコンビニエンスストアのマーケティング方法を、各国いくつかのブランドを取り上げそれらのインスタグラムを例に用いて見ていきます。

 

日本:公式感・統一感重視 迅速な情報提供

◾️日本コンビニエンスストア各社公式インスタグラム  [名前をクリック]
セブンイレブン
ファミリーマート
ローソン

日本の各ブランドInstagramは公式感が強く、統一感が重視されたものとなっています。消費者に迅速な情報提供をする役割という印象を受けます。


台湾:消費者と横並びの親近感・大衆性のある雰囲気

◾️台湾コンビニエンスストア各社公式インスタグラム  [名前をクリック]
7-ELEVEn Taiwan (小七) 
全家便利商店 台灣 (Family Mart) 
萊爾富便利商店 Hi-Life 

台湾はというと、リール投稿を用いたものも多く、公式ではあるものの消費者との距離間の近い、大衆性のある雰囲気となっています。
また季節問わずキャンペーンが多く開催され、「買一送一」という、1つ買うと1つ貰えるbuy1get1のキャンペーンは常時といって良いほど頻繁に行われています。


アメリカ:トレンド、影響力重視・ユーモア溢れる投稿の2軸

◾️アメリカコンビニエンスストア各社公式インスタグラム  [名前をクリック]
7-ELEVEn
Circle K Stores
Wawa
QuikTrip

一方アメリカは、インフルエンサーや著名人とのコラボといった規模感の大きいもの、それと同時にmeme-ミーム*を用いるなどユーモアのあるものの大きく分けて2つが目立ちます。また日本でいう「あるある」を取り入れた、ユーモアの溢れる投稿はアメリカならではのものだといえます。
*meme-ミーム:インターネット上で広く共有される画像や動画、フレーズ等のこと。
(参考:weblio meme, 参照日:2024年10月16日)

 
ここまで、日/台/米各国のコンビニエンスストアのSNSの違いを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
マーケティングの方向性の違いが一目瞭然で、筆者には非常に興味深く写りました。

日本は公式感・統一感を重視し、また迅速な情報提供を行い、台湾は消費者と横並びの親近感のある、大衆性のある雰囲気。アメリカはトレンド、影響力重視、またユーモア溢れる投稿の2軸があることが見て取れました。
これら3国の各SNSマーケティングは各地域の消費者、国民に合ったものであるために受け入れられている、つまり各地域で浸透しているSNSの在り方から、国民性が垣間見られるともいえるのではないでしょうか。
そこで、今回見てきた事実から各国の国民性を筆者の観点含め説明するとすれば、
日本:消費者とは一線引いたところからされる、整った形での(公式感、統一感のある)情報提供といった形式に信頼感を持つ、そのような情報が好む。
台湾:公式感、統一感に重きは置かず、消費者が共感しやすい(大衆性のある)情報を好む。
アメリカ:ビッグなもの(インフルエンサーコラボ、影響力のあるもの)、ユーモアやジョークが散りばめられたようなものを好む。
となると考えます。

SNSの利用方法は各市場によって異なりますが、いずれも消費者のニーズに即したコンテンツ戦略が重要です。そうすることによって、ターゲットとなる消費者との関係構築においてSNSは非常に強力で有効な手段として活躍してくれます。

 

海外進出を視野に入れる際のSNSマーケティング戦略の留意点

日本企業が海外に進出する際には、国をも超えて消費者にリーチできるSNSを活用するのが効果的であるのは想像に難くありません。またその際には、地域性に沿ったSNSの使い方が鍵となります。

今回の日台米の例を用いると、日本では情報を適切にクリアに伝え、消費者にとって説得力のあるものであることが効果的であり、台湾では大衆密着型で親近感のあるような雰囲気が消費者にとっては馴染みやすく、また信頼も得られやすいといえます。一方アメリカにおいてはインフルエンサーを用いる、また流行りに合ったユーモアのある内容(ミームの活用等)にすることで消費者の関心を集める、トレンド重視な傾向が好まれることが伺えます。

これらの知識を元にすれば、例えば台湾ではリール投稿を活用し、またその際には大衆性のある雰囲気・内容にすることで、消費者と距離感の近いものにする、その一方で、アメリカにおいてはインフルエンサーの起用で関心を集める、また流行りのミームを活用した投稿を作成し、ユーモアさで関心を集めるといったように、各地域のターゲットに合わせた適切な運用方法を考えつくことができます。
これらはその国・地域の消費者の傾向や好みを理解している、つまりローカライズの方法を知っているからこそ考えられることです。

このように、日本から海外の市場に合わせたブランドメッセージングを行うためには、ターゲットとなるその国・地域の消費者の好みに合った投稿内容やプロモーションが必要不可欠です。またそれに加え、インスタグラムはじめ、活用するSNSのアルゴリズムを理解した上で、各国特有のマーケティング手法を適切に取り入れることが重要です。

 

終わりに:ローカライズされたマーケティングの重要性

本稿を通し各国コンビニやそのSNS、またそのマーケティングの違いについてどう思われたでしょうか。
日常生活の一部ともいえるコンビニエンスストアだからこそ垣間見える地域性・国民性の違いを、比較・考察することで少しは感じていただけたかと思います。

また、今回におけるターゲットはコンビニ利用者ですが、もちろん我々もその一員であり、つまり消費者の立場から考えるとなった際には、他の領域と比べるとターゲットからの視点が想像し易いということです。
しかしここで、ターゲットが海外市場となるとまた話が大きく異なってきます。そこで鍵となってくるのが、まさにローカライズです。ローカライズとは単純に「地元に合わせる」という意味ですが、一口にそうはいえども、それを可能にするためには各地域の市場特性を把握しておくことが必須となります。
海外に目を向ける際には、ローカライズを意識しないと、我々にとっても身近でまた我々自身が消費者の一員でもあるコンビニエンスストアにおいてでも気がつかない部分が多々あります。今回はそれを感じていただけたのではないでしょうか。
(参考:weblio辞書 localize, 参照日:2024年10月16日)

今回日本・台湾・アメリカ3国を比較考察し、特に同じアジアである日本と台湾の二国間でもなお、SNSマーケティング方法に違いがある事実は意外であったと思います。アメリカ含め海外進出の際には、現地の文化や消費者ニーズに即した、ローカライズを踏まえたマーケティングをぜひ意識したいですね。

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