こんにちは、LAでインターン中の社会人留学生です。
突然ですが、皆さんローラースケートを最後にしたのはいつですか?というのも、カリフォルニアのビーチ沿いでは、大人から子供までローラースケートをしている人をよく見かけるのです。アメリカに来る前からカリフォルニアのビーチではスケートボードやローラースケートを楽しむ人が多いイメージが強かったのですが、まさにその通りでした。
スケートボードは近年日本でも人気スポーツの1つとなっており、2024年パリオリンピックでは多くの日本人選手が活躍しメダルを獲得したことも記憶に新しいです。ただ、ローラースケートについてはどうでしょう。日本にいれば、子供たちの遊びの1つか、ある程度大人になれば某レジャー施設で遊ぶタイミングでしか出会うことはないのではないでしょうか。
では一体なぜアメリカでは日本よりローラースケート人口が多いのでしょう?その歴史的背景の秘密を解き明かすと、現代の新しいマーケティング手法と掛け合わさっていることが見えてきました。
そこで今回は、アメリカでのローラースケート人気の秘密と、新たなストリートカルチャーマーケティングの可能性について探ってみます。
アメリカでローラースケート人口が多い理由
アメリカ人が日本人よりも日常的にローラースケートをする理由には、文化的背景やインフラ、レジャーの選択肢などが影響しています。
アメリカでは、1970年代から80年代にかけてローラースケートが流行し、ローラースケートリンクやパークが普及しました。同時期に流行したディスコ文化との結びつきが強く、ディスコ音楽に合わせて滑りながら踊るという新しい楽しみ方が生まれました。スケートリンクがナイトクラブのような雰囲気を持つことで、ローラースケートリンクは多くの人にとって社交の場となりました。現在ディスコブームは去ったものの、ローラースケートは若者から家族まで幅広い層に受け入れられ、定着しています。
定着している要因としては、現在も多くの地域にスケートリンクやローラースケートのコミュニティが存在し、定期的にイベントやパーティーが開催されていることがあげられます。これにより、ローラースケートは家族向けのレジャーやコミュニティイベントとして、地域社会の交流やエンターテインメントの一環として続いているのです。
日本でもアメリカと同時期に一時的に流行しましたが、このような持続的な文化的バックグラウンドがなかったため、アメリカのように定着せず一過性のブームに留まったと考えられます。
インラインスケートの普及と「ローラーブレード社」
もう少しだけローラースケートの歴史を深堀りすると、ディスコ文化以外にも、ローラースケートの流行を後押ししたことがあります。それは1979年にローラーブレード(インラインスケート)が発明され、よりスピードを出しやすく動きやすくなったことです。
インラインスケート(ローラーブレード)を発明した「ローラーブレード社」は、元々アイスホッケー選手のトレーニング用として開発に着手しました。アイスホッケーやスピードスケート選手にとって、オフシーズン中のトレーニングツールとして魅力的であり、はじめはスポーツ選手の間で普及が進みました。1980年代になると、インラインスケートはエクストリームスポーツとして注目を集めるようになり、若者を中心に人気が急上昇しました。ローラーブレード社はこうしたニーズに応えるため、耐久性や機動性をさらに高め、ジャンプやトリックに対応できるデザインを採用して市場の拡大を図りました。
その後、ローラーブレード社は、地域イベントやパフォーマンスショーを通じてインラインスケートの認知度を高め、一般の消費者への浸透を図りました。また、雑誌広告やテレビコマーシャルを活用して、インラインスケートを「おしゃれで健康的なライフスタイル」の象徴としてアピールしました。さらに1980年代はアメリカでアウトドア・フィットネス活動が流行し始めた時期であり、インラインスケートもその一環として取り入れられました。特に、公園や街中で手軽にできるスポーツとして人気を集め、多くの人が日常的に楽しむようになりました。
ローラーブレード社は、こうして流行やニーズに素早く答え、人々の日常に溶け込みライフスタイル化する形でインラインスケート市場の拡大に成功し、現在のローラースケート(インラインスケート)文化の基盤を築いていったのです。
新たなストリートカルチャーマーケティングの可能性
実は近年、ローラースケートは健康やフィットネスの手段として再評価されています。特にパンデミック以降、屋外で楽しめるアクティビティが見直され、若い世代にも再び人気が高まっているのです。
そしてローラースケートはInstagramやTikTokなどのSNSでもおしゃれなアクティビティとして取り上げられ、レトロファッションと相まって再ブームを迎えています。多くのインフルエンサーがローラースケートを取り入れることで、新たな世代にも魅力的なカルチャーとして広がっています。
実際にInstagramやTikTokで「Roller skating」を検索してみると、若者がノスタルジックな音楽(70 年代や 80 年代のディスコヒットなど)に合わせてローラースケートをしたり、ファッションの一環としてフォトジェニックな画像や動画を投稿しているものを大量に見つけることができます。ちなみに「#Rollerskating」の件数はInstagramでは358万件以上、TikTokでも140万件以上に及びます。(2024年11月現在)
なかでもインフルエンサーのAna Cotoは、TikTokやInstagramでのローラースケート動画、特にジェニファー・ロペスの「ジェニー・フロム・ザ・ブロック」に合わせて滑る動画が話題となり、パンデミック中にローラースケートへの関心が再燃する一因を作りました。他にもThe Griffin BrothersやSabrina Stewardなどがあげられます。
彼らの投稿を見ていると、多くのローラースケーターはレトロ風のファッションをスケートスタイルに取り入れており、ビンテージの美学を好む若い世代の共感を呼んでいます。その流れを受け、実際にローラースケートブランド「Impala Rollerskates」や「Moxi Skates」などは、自社製品を単なるスケート靴としてではなく、レトロシックなライフスタイルの一部としても販売しています。同社のスケート靴は鮮やかな色とデザインで、Instagram世代にアピールしています。
これらの企業はどちらもInstagramで積極的にマーケティング活動を行っており、このプラットフォームを活用して自社製品を宣伝し、ローラースケートコミュニティと交流しています。
「Impala Rollerskates」は、ユーザー生成コンテンツやインフルエンサーとのコラボレーションを頻繁に取り上げており、「Moxi Skates」 は、スケートチームの活動・コミュニティイベントに関するコンテンツを共有しています。またYouTubeチャンネルを宣伝し、チュートリアル、インタビュー、パーク情報などを取り上げ、エンゲージメントをさらに高めています。
どちらのブランドも、Instagramを効果的に活用してユーザーとつながり、製品を紹介し、ローラースケート愛好家の間でコミュニティ意識を育んでいます。
このように、ローラースケートはディスコ文化との深い結びつきや、現代のレトロブームによる再燃により、今もその高い人気を誇っています。
ローラースケートは、もはや単なるアクティビティではなく、視覚的なストーリーテリング、ファッション、ノスタルジア主導のオンライントレンドと深く絡み合ったライフスタイルになってきています。その時々のニーズに素早く答え、人々の日常に溶け込みライフスタイル化することで、ローラースケートと同様、他のストリートカルチャーについてもブームを起こすことができるかもしれません。
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