電子商取引(EC)市場が、アメリカと日本の両国において急速に拡大している現在、日本企業様向けのアメリカ進出支援サービスを展開している弊社Global Doorでも「アメリカでECサイトを作りたい」「D2Cのウェブサイトを作って欲しい」というようなご依頼をいただく機会が増えてきました。D2Cシステムの構築自体は(すでにアカウントをお持ちなのであれば)Amazonの購買システムや、例えばECシステムを自社で持つインポーター・ディストリビューターと提携して、自社ウェブサイトと繋げられれば、購買機能を構築すること自体はさほど難しくありません。しかしながら、これまで日本でウェブサイトに触れてきた日本のクライアント様が、アメリカ向けのEC制作を行う中で最もつまずくのが、「コンテンツ」と「デザイン」です。弊社パートナーの中にも日本のウェブサイト構築に長年関わってきたメンバーもいるのですが、初めてアメリカ向けのウェブサイトデザインを行った際は、あまりの違いに「これで良いの?」と、つい不安の声を漏らしていたそうです。各国の消費者ニーズや文化の違いにより、ECサイトのデザイン・盛り込むコンテンツも非常に異なるため、これらをしっかりと理解したうえでローカライズをすることが重要になってきます。
この記事ではアメリカ進出を一気通貫でサポートさせていただいている弊社がご一緒させていただいたお客様のECサイトを例に挙げながら、アメリカと日本におけるECサイト構築の違いについて、ユーザーインターフェーズ(UI)にフォーカスをしながら比較・解説できたらと思います。
ユーザーインターフェース(UI)で比較
アメリカのECサイト制作の中で日本の企業様が最初にカルチャーショックを受けるのがUIです。アメリカでは日本と比べ、シンプルで直感的なデザインが好まれるため、日本のウェブサイトに慣れている我々が初めて見ると、内容量の薄さに驚くことでしょう。それぞれの特徴をもう少し掘り下げてみましょう。
1. シンプルで直感的なデザイン vs 豊富な情報量と詳細な商品説明
上述の通りアメリカのECサイトでは、ユーザーがすぐに操作方法を理解できるシンプルなレイアウトが好まれます。多くの文章やコンテンツを盛りに盛ったウェブサイトは視覚的にどこを読めば良いかわからずユーザー離脱率が高まると言われています。例えば、AmazonやAppleのサイトはクリーンなデザインを採用しており、重要な情報が一目でわかるようになっているのがお分かりいただけるでしょう。
一方で日本のECサイトでは、豊富な情報量と詳細な商品説明が重視されます。日本の消費者は、購入前に商品について詳しく知りたいというニーズが強いため、商品ページには詳細な説明やスペック情報が掲載されます。これには、使用方法やメンテナンス方法なども含まれます。例えば、楽天市場では、商品の詳細情報、レビュー、関連商品の情報が一つのページに集約されているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
2.クリーンで落ち着いた色合い vs 明るくカラフルなデザイン
これは日本人である筆者も驚いたところなのですが、明るく派手好きなイメージのアメリカ人ですが、ECサイトは反対に、色彩は視覚的な落ち着きをもたらし、過度な装飾や派手な色彩は避けられる傾向にあります。例えば、黒、白、グレーといった中立的な色が多く使用され、ポイントとしてブランドカラーが使用されます。筆者が某クライアント様の商品の競合分析として他社サイトを調べていた時も、70%程度がモノトーン調のデザインで構成されており、余計なものに目を行かせない配色になっていました。
一方で日本のECサイトは、視覚的に明るく、カラフルなデザインが多いです。これは、視覚的にユーザーの注意を引き、楽しさを感じさせるためと言われています。例えば、ファッションブランドのZOZOTOWNは、カラフルなバナーやイラストを用いて、視覚的に楽しいショッピング体験を提供していますね。
3.大きな画像や動画の多用 vs 情報が詰まったレイアウト
アメリカECでよく目にするのは画面いっぱいのトップバナーです。高解像度の画像やプロモーション動画は、商品の魅力を視覚的に伝える強力な手段です。特に、ファッションやエレクトロニクスなどの分野では、商品の使用シーンを具体的に示すことが購買意欲を高めます。弊社ではECサイトトップのバナー制作のため、スチール撮影やプロモーションビデオの撮影を行うこともしばしばです。NikeのECサイトでも、商品の画像や動画を多用して商品特性や使用感をうまく伝えていますね。
一方、日本のECサイトの画面には多くの情報が詰め込まれています。これは、消費者が一度に多くの情報を確認したいというニーズに応えるためと言われています。例えば、Yahoo!ショッピングは、多くの情報を一画面に収めることで、ユーザーが一目で様々な商品や情報を把握できるように設計されています。
日本のスパークリング酒 ”ICHIDO” 様のEC制作をサポートさせていただきました
ICHIDOは、「”SAKE”の魅力を全世界に、そして次世代に伝えたい。」を掲げる日本初の本格スパークリング酒ブランドです。「匠の技による伝統的な日本酒を、これまでにない発想で新しい価値体験に変えて発信していく」という思いを掲げ、世界約60ヶ国以上、延べ数百人ものテイスティングを実施してたどり着いた、酸味と甘味の絶妙なバランスと泡の舌ざわりは、現在カリフォルニアとニューヨークを中心に人気を拡大させています。現在、弊社でアメリカ進出サポートをさせていただいており、同社のECサイトを昨年ソフトローンチし、今年の3月にグランドオープンしました。
◾️ichido-Sparkling Sake – ICHIDO
https://ichidoglobal.com/
日本のHPはこちら
ICHIDOのEC制作サポートでも上記同様にアメリカ向けUIの特徴を意識しながら制作を行いました。トップページはなるべくビジュアルのみで訴求できるように商品の細かな説明はなるべくそぎ落とし、商品の説明ページでもなるべく直感的に理解できるよう、イラストを使用してペアリング情報を記載しています。
EC制作は公開して終わりではない
日本のECサイトでも言えることですが、ECはローンチしてから様々なWeb分析を行いながらサイトのUI/UXの修正を行い、よりユーザーを購買まで誘導できるようPDCAを回すことが必要不可欠です。「LPO (Landing Page Optimization) 」には終わりがなく、刻一刻と変化するユーザー行動に対処しながら、サイトを稼働させ続けることが重要になってきます。弊社ではクライアント様に応じて最大4つのツールを使って包括的にサポートさせていただいています。
おわりに
さて、いかがだったでしょうか。アメリカと日本のECサイトのUIには、文化や消費者ニーズに基づく明確な違いがあることがお分かりいただけたことでしょう。上述した通りアメリカのECサイトでは情報を極力そぎ落とし、直感的にどのような操作を行えば良いか(どこ見れば良いか)わかるようになっています。ただし一方で課題になってくるのが商品のナーチャリングです。ECサイト運営に現在も携わっている筆者の経験上、日本のECサイトに比べてアメリカのECサイトは圧倒的に「カゴ落ち」が多い傾向にあります。「カゴ落ち」とは、ECサイトでカートに商品を入れたものの、購入まで至らず離脱してしまうことをいいます。
直感的なデザインが多いアメリカのECサイトではユーザーの商品に関するしっかりとした理解が無いままカート追加を行うものの、価値をしっかりと見出せずに購買をキャンセルする人が多い、というのが筆者の仮説です。
それではこの問題をどのように解決すれば良いのでしょうか?そのお話はまた別の機会に、「アメリカと日本のECサイトにおけるUXの違い」でお話しできればと思います。
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