”Liquid Death” から学ぶ挑戦的なマーケティングとは?

 先日、アメリカの大型スーパーTargetを訪れた際のことです。ふらっとドリンクコーナーを通りがかると数年前に一世を風靡し日本でも話題になった “とある飲み物” を発見しました。その名も”Liquid Death”。禍々しくもキャッチーなドクロのアイコンと洗練されたスタイリッシュなパッケージデザインを初めて見た際「お、新しいビールかな?」と興味を持っていかれたのは記憶に新しいです。すでに有名になった飲み物なので読者の皆様の中にもご存知の方がいるかもしれませんが、これ「中身はただの水」なのです。マーケティング業界ではそのコンセプトと打ち出し方は有名ですが、初登場から5年経った現在、今一度彼らの行ったマーケティング戦略を振り返り、Liquid Deathは現在どのような進化を遂げているのか、話していきたいと思います。

◾️リキッドデスが時価総額1000億円に到達できた二つの理由
https://youtube.com/shorts/mj6-wILULz4?si=zGqjh9iwwyEaQd-_ 

2つのコンセプト

Liquid Deathは、2019年に創設された缶入り水のブランドで、”渇きを殺せ(Murder Your Thirst)”というキャッチフレーズで、現在でも特にストレートエッジ文化やヘビーメタル、パンクロックのファンに向けてマーケティングが行われています。創設者のMike Cessarioは、自身のパンクやヘビーメタルバンドでの経験から、このユニークなブランディング戦略を思いついたとされています。

さらに、Liquid Deathの中心となるミッションは、「プラスチック廃棄物の削減」です。そのため、環境に優しいアルミ缶を使用しており、売上の10%をプラスチック汚染を終わらせるための非営利団体に寄付しています。アルミ缶は、その73%がリサイクルされた素材から作られており、石油や天然ガスから作られるプラスチックと比べて環境に優しいとされています。このように、環境へのポジティブな影響をブランドの中核的な価値として位置づけ、消費者に訴えかけることで、製品の購入を促しているわけです。

Liquid Deathは、①挑戦的なブランドアイデンティティ、②環境に対する強いコミットメントの2つで大きな話題を集め急成長を遂げたと言うのは有名な話ですが、それ以外にも積極的に力を入れたマーケティングがあります。

基盤を作ったSNSマーケティングとコラボレーション

初期のマーケティング戦略として、Liquid Deathは1,500ドルで最初のコマーシャルを制作し、Facebook広告に3,000ドルを投じて3か月以内にアメリカでも有名なミネラルウォーターブランド:Aquafinaよりも多くのFacebookフォロワーを獲得しました。これはデジタルマーケティングで日頃クライアント様の広告を運用している筆者から見ても、比較的リーズナブルかつ驚異的に短い期間での成果であったと感じます。”Liquid Death”がSNS広告で使用したクリエイティブは、売り込みよりも非常にウィットに富んだユーモアに重点を置いた設計がされていたようです。この部分はまた別の機会にご説明します。

◾️Liquid Death – Deadliest Stuff On Earth?
https://www.youtube.com/watch?v=EeRADNpdKD4

さらに、批判や否定的なレビューを集めて作成した「Greatest Hates」というアルバムをSpotifyでリリースするなど、ネガティブなフィードバックを逆手に取ったユニークなプロモーションも行っています。
(参考:Topic Insights https://topicinsights.com/impact/the-story-and-purpose-of-liquid-death/、参照日:2024年3月28日)

また、Liquid Deathは音楽フェスティバルやイベントとのパートナーシップを通じて、そのターゲットオーディエンスとの結びつきを強化しています。例えば、Live Nationとのパートナーシップを通じて、コンサートやフェスティバルでの販売を拡大しています。また、Bonnaroo Music and Arts Festivalなどの大規模な音楽イベントでのブランドアクティベーションを通じて、独自のブランド体験を提供し、参加者に強い印象を残しています。
(参考:POLA MARKETINGhttps://polamarketing.com/our-lab/creative/how-liquid-death-mountain-water-killed-traditional-marketing/、参照日:2024年3月28日)

これらの戦略を通じて、Liquid Deathは従来のマーケティングに挑戦し、独自のブランドイメージを確立することに成功しています。その結果、短期間で顕著な成長を遂げ、現在でも多くの人々から支持を集めているのです。

5年経った現在は?

2021年には、45百万ドルの収益を上げ、2022年には130百万ドル、2023年には263百万ドルの小売売上を報告しています。昨今では2024年3月には6700万ドルの資金調達を行い、企業価値は14億ドルに達しました。最近では「Death Dust」という新製品を発表し、健康志向の飲料市場でのポジションも強化しています。
(参考:Death Dust https://liquiddeath.com/products/death-dust、参照日:2024年3月28日)

ブランドが提供する製品範囲を多様化し、急成長しているハイドレーションカテゴリーに進出しつつあるようです。ハイドレーションカテゴリーとは水分補給に関連する製品やサービスを指します。これには、水やスポーツドリンク、電解質を補給するためのパウダーやタブレットなど、人々が適切な水分バランスを維持するのを助けるアイテムが含まれます。このカテゴリーの製品は、特にアクティブなライフスタイルを送る人々や、健康とウェルネスに重点を置く消費者に人気があります。これらをどのようなユニークなマーケティングで打ち出していくのか、今後も”Liquid Death”の最新動向もチェックが必要ですね。


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Toru Matoba / Project Mannager

日本大手メーカーにて法人セールスおよびオフィス建築のPMに従事。 その後 Los Angeles 現地の広告代理店にて日系企業の米国進出サポートを行う。 米国 Marketing x PM を得意とする。

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